ラジオ対談 ニッポン放送「おしゃべりラボ」

8月8日に、弊社代表の川添高志がラジオ番組にて「ドコケア」を紹介しました。このサービスがなぜ生まれたのか、現在の課題は何か、そして日本のケアはどこへ向かうべきか――。

川添が、パーソナリティのお二方(中村陽一さん・残間里江子さん)とともに熱く語ります。

ドコケアとは?

中村陽一さん(以下中村):今朝のお客様をご紹介しましょう。ケアプロ株式会社代表取締役社長、川添高志さんです。おはようございます。

川添高志(以下川添):おはようございます。

残間里江子さん(以下残間):先週(※8月1日の同じ時間に、川添が予防医療事業について話をしました)は聞き入ってしまい、時間が足りないくらいでした。

中村:まずは、先週聞き逃した方もいらっしゃるかもしれませんので、改めて、川添さんがやっているケアプロの中身についてご紹介いただけますか。

川添:現在、二つの事業をしています。一つ目が、血糖値やコレステロールや骨密度などがその場でわかる「セルフ健康チェック」というものを、全国各地に出張しておこなっています。もう一つが、中野区と足立区を中心として、24時間365日の訪問看護サービスをしています。

中村:今まではこの二本柱で展開されていましたが、今年の4月から新しい取り組みを始められているそうですね。

川添:外出支援の取り組みとして「ドコケア」というサービスを開始しました。病や障害をもっている方が、買い物・通院・通学をしようとしたときに、家族だけではなかなかサポートできないことがあります。そうしたときに、全国各地にいる時間とスキルのある看護師・ヘルパー・認知症サポーターといった方々とUberのようにマッチングできるような外出支援の取り組みを始めました。

川添:料金は、1時間1500円から4000円を目安としています。医療行為を伴う外出支援では、4000円ほどします。

中村:「ドコケア」というのは「どこでもケアが受けられる」ということですね?

川添:その通りです。

中村:たしかに、移動介助サービスのようなものは、まだまだ足りないとはいえ、これまでもありました。しかし、そこに「ケア」という観点が入っているのがドコケアの新しさだということですね。

川添:はい。ドコケアでは、必要であれば医療行為ができます。医師の指示書をアプリ上でいただいた上で、吸引や点滴をしながらの外出を支援できるということを謳っています。これまでも、病院や自宅であれば医療を受けられたのですが、この両者の中間――私は交通医療と呼んでいます――を新しい分野として切り開いていきたいと思っています。

隠れたニーズ

残間:このようなサービスがあれば、本人が嬉しいだけでなく、ご家族も助かるでしょう。しかし、介助者のなり手はいらっしゃるのですか?

川添:看護師やヘルパーとして働いている方々には、非常勤で働いている方が多くいます。そのような方々は、患者さんや施設利用者さんと普段から仲がよく、かれらが「花見に行きたい」や「墓参りがしたい」といったニーズをもっていることを知っています。ですので、看護師さんやヘルパーさんには、隙間時間に副業で外出支援をしたいという要望があります。

中村:ドコケアがもともと始まったきっかけはどのようなものでしょうか?

川添:私たちは訪問看護サービスをやっています。そこでは、利用者さんから、外出支援でどこかに行きたいというのがあるのですが、仮にそれを自費でやるとすると1時間で9000円ほどいただくということになってしまいます。事業者として経営を成り立たせるためには、これが妥当な金額です。とはいえ、利用者からみれば経済的負担が大きいでしょう。そうかといって、スタッフが個人的にボランティアで外出支援をするというのは、事故があったときに心配です。

残間:誰がどう補償するかも含めて、そうですね。

川添:それで、「副業で個人で外出支援をしていいですよ、そのときの保険を私たちが作りますよ」ということで、ドコケアを作ったわけです。その上で、これは私たちだけではなく他の訪問看護事業者にもニーズがあるので、いわゆるマッチングシステムとして、皆さんに使っていただくという形にしました。

(※ドコケアの保険についてはこちらをご覧ください)

中村:なるほど。そこも新しい工夫ですね。

残間:そういうニーズに誰も気が付かなかったわけではないと思います。しかし、アイデアを実現するにあたってのこうした持続的経営のための工夫が、川添さんたちならではだと思います。

制度のはざまを行く

中村:そのような外出支援は、制度の壁のような様々なハードルがあってできなかったということでしょうか?

川添:たとえば、公的移動支援といって、病院への通院サービスは一定程度あります。ただし、「病院まで行ったらあとは自分でやってください」とか、「病院のほうでやってください」とか、そういうふうになっているのが実情です。しかし、それだと病院でトイレにも行けないという方がいます。この点が既存のサービスでは成り立たないところではないかと思って見る機会が多くありました。

中村:私も、移動の介助――ソーシャル・モビリティと呼んでいますけれども――をやっている方たちと話をする機会があって、似たことを聞きます。既存の支援サービスは、点としてはあるのだが、全体をつなごうとすると必ずどこかで途切れるそうですね。利用者側も、それが心配でなかなか出られないのではないでしょうか。

残間:その点での一番の先進国は、どこなのでしょうか?

川添:こういう公的支援についていえば、日本は普及しているほうだと思います。

残間:日本の医療や介護は質が高いと言われていますもんね。

川添:今後も高齢化がどんどん進んでいくので、日本が支援事業のモデルを作って、海外に展開することができたらいいと思っています。

残間:本当にそうだと思います。世界に冠たる「高齢者が安心して幸せな最期が送れる国」というのを、新しい日本国のコンセプトにしてほしいです。こんなに急速に、20年足らずで、高齢化が訪れたのは世界で日本が唯一ですから。他の国はもっとゆっくり高齢化が進んだので。

中村:韓国や中国も、高齢化という点で急速に追いかけて来ていますけれども……

残間:とはいえ、まだまだ制度の壁がありそうな気がします。

中村:制度的な壁や仕組みの壁を突破されるときに、これまでも、川添さんはいわゆるアドヴォカシーと呼ばれるようなしかたで政策提言をされてきたわけですよね。

川添:そうですね。

ニーズの多様性にどう応えるか?

中村:ドコケアのサービスは、まだ始まったばかりなので、いろいろ検証しながらという段階にあると思います。今のところ、感触はどうですか?

川添:一つ一つのニーズが面白いと思っています。たとえば、海外に住んでいる日本人の方が、日本にいる認知症のあるお母様のために買い物支援を依頼するとか、視覚障害のある方が、ATMに行きたいのだがソーシャルディスタンスのしるしが見えないからついてきてほしいとか――。本当にいろいろなニーズがあります。そして、やはり、公的サービスでは限界があるのでこういったものを利用したいというニーズを感じます。

残間:以前は「病気の人は家にいなさい、ベッドに寝てなさい」といった感覚がありました。けれども、病気の人ももちろん買い物がしたいし、自分の目で見て「これ欲しい」と思ったり「あそこに行きたい」といって行ったりしたい。そこの考慮が日本では足りていなかった。若くして怪我をした方はとりわけ、そうやって楽しみたいですもんね。

中村:通院のための外出であれば、みなさん理解があると思います。ただ、レジャーなど遊びに行くときにも、病気であろうが障害をもっていようが同じように楽しめるようにというのが、実は本当に大事なんですよね。移動の自由があるという建前だけではなく、それを実現するためにはどうすればいいかというところが大切ですね。

残間:実際に外出支援をお願いするときには、どこにどう連絡すればいいんですか?

川添:ドコケアのホームページで登録をしていただいて、登録している介助者に、この日に外出支援をしてほしいというふうに、スマートフォンで依頼していただきます。スマートフォンの操作が難しければ、ご家族の方に代理で入力していただくという形になります。

残間:しかし、どんどん依頼が来てしまうと、介助の需要・供給のバランスは大丈夫ですか?

川添:おっしゃるとおりです。働いてくださる方をまずは増やさないといけません。今、病院や介護施設といった法人と提携をしています。また、看護学生の方にも呼びかけています。受け皿をまずは確保してから、その人達の知り合いの患者さんや利用者さんで外出したい方に声をかけていただくというふうにしていこうと思っています。

中村:今はそうやって基盤を作りながら広げていくという段階なのですね。

残間:外出をしたい人と支援をする人の両輪が整っていないといけませんね。

中村:ところで、この新型コロナという状況のなかで、ある意味で、すべての人が外に出られないわけです。

川添:私たちも、今は必要な外出だけするように言っています。とはいえ、今回の新型コロナによって多くの人が外出の大切さ・必要性に気付いたので、ずっと外出に困っている人がいるということに気付いてもらう機会になってほしいです。

残間:外に出られないでつらいと感じている人が今は多くいますが、病気だというだけで以前からそのような状態におかれていた人々がいるということに思いを致さないといけないですね。

医療界のジャニーズ事務所

中村:今後へ向けてのチャレンジや、こういうことを考えたいということは、ありますか?

残間:もしくは、ここがこうなったらもっといいのにということはありますか?

川添:医療界・介護業界は本当に課題が山積みなので、それを解決できる人材の育成が一番重要だと思っています。私自身もそうですし、私の会社の社員もそうです。

中村:どういう人材がこれから必要になってきますか?

川添:たとえば、私たちがやっている予防医療・在宅医療・外出支援を社長としてやってくれる看護師を育成したいと思っています。

中村:そのような人たちは、経営の観点ももっていないといけないですね。

川添:そうです。そうしないと、私が死んだあとに事業が続かないので。そういう意味で、持続可能にするためという意味で、経営者の育成に主眼を置いています。

中村:かつて「医療福祉界のジャニーズ事務所を目指す」と言われていたと聞いています。これはどういう意味でしょうか。

川添:ジャニー喜多川さんがお亡くなりになっても依然として優秀なタレントが集まってきて、また次々にいろいろなユニットができますよね。医療業界には、助産師さん・保健師さん・管理栄養士さんといろいろな方がいるので、そういう方々が様々な事業をプロデュースできるような生態系を作っていきたいと思っています。それが「ケアプロ」です。

残間:様々なユニットが、様々な形で混在しているというのは、いいですね。

中村:そういうふうにして役割分担をしたところがつながっていかないと、本当の意味での社会的アウトカムというものが成果として出てこないですもんね。